品質保証スペシャリストの河相です。
今回は、うなぎ弁当で食中毒が発生というニュースを解説したいと思います。
原因
保健所の調査の結果、原因菌は黄色ブドウ球菌のようです。
黄色ブドウ球菌とは?
黄色ブドウ球菌は、主に哺乳類の表皮にいる身近な微生物です。
普段は、特に悪さはしないんですが、増殖するとエンテロトキシンという毒素を産生します。
このエンテロトキシンという毒素がやっかいで、煮沸しても分解されないんです。
ですので、黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐには、黄色ブドウ球菌自体の増殖を抑制して、エンテロトキシンを産生させない衛生管理が非常に重要になります。
ちなみに黄色ブドウ球菌自体は、熱に弱くて75℃・1分で簡単に死にます。
手洗いをすれば大丈夫?
黄色ブドウ球菌は人間の手のひらに常に存在します。
常在菌と呼ばれる菌ですね。
ですので、作業をする前の手洗いが非常に大事になるのですが、どれだけしっかり手を洗っても、黄色ブドウ球菌をゼロにすることはできません。
彼らは、皮膚の奥の方にも存在しているので、手洗いだけでは全てを除去はできないんです。
これが手袋が必要な理由です。
現場の誤った理解
このニュースには続きがあり、そこに気になるコメントがありました。
以下、引用です↓
今回の騒動を同業者はどう捉えているのか。実際に店を営むうなぎ屋の主人に話を聞くと、「業界的にはヤバい、という感じ。同業者はみんな困るし、イメージがすごく落ちてしまうから、どういう風に落ち着くのか心配」と複雑な心境を吐露。今回食中毒が発生した理由については「あくまで想像」と前置きしたうえで、「土用の丑の日のシーズンに合わせて、前日、前々日ぐらいから大量に仕込み、粗熱を取らずに、温かい状態で冷蔵庫に入れてしまったことで、中で蒸れて菌が増えてしまったのではないか。その日にさばいて、その日に焼いて、その日に売ると普通にやっていれば、うなぎでは(食中毒は)絶対起きない」と見解を語る。
微生物がもっと育ちやすい温度帯は、一般的に20℃~50℃といわれ、
この温度帯は魔の温度帯と呼ばれます。
この温度帯で食材を放置すると、微生物が爆発的に増えるので、以下の3つが重要になります。
- 60℃以上で保管する
- 20℃以下で保管する
- 60℃→20℃の時間を可能な限り短くする
3つ目については、30分以内に中心温度を20℃以下まで下げることが重要です。
詳細を知りたい方は「大量調理施設衛生管理マニュアル」でググってみてください。
上記をふまえると、
「粗熱を取らずに、温かい状態で冷蔵庫に入れてしまったことで、中で蒸れて菌が増えてしまったのではないか」が間違っていることが分かると思います。
温かい食材を冷蔵庫に入れてはダメと言われることがありますが、
これは、冷蔵庫内の温度が上昇し、他の食材に悪影響がある、あるいは冷蔵庫の故障の原因になるからです。
業務用だと、熱い状態で入れることができる専用の冷蔵設備があります。
またもっと手軽に、スポットクーラーや扇風機で強制的に冷やして、すぐに冷蔵庫にいれる方法は、広く実施されています。
今回のまとめ
食中毒に関する知識は、専門的な内容が多いため、自社だけで完璧に対応するのは非常に難しいと思います。
そういったときは、外部の専門家に原因究明や対策をお願いするのも良い方法です。
A&H Companyでは、絵に描いた餅のようなべき論ではなく、適切に利益を確保できる安心安全な品質管理体制をご提案できますので、いつでも気軽にお声掛けください。