仕事をする上で、歳を重ねるごとに痛感するのが「信頼」の重要性。
一方で、信頼を得る確実な方法はどこにも存在しないのが現状。
そこで、今回は私の大切な財産となっている体験談を事例として共有します。
経験から分かった信頼関係構築のポイント
- (前提条件が同じでないと)本に書いている手法は、通用しない。
- 人の情緒的な側面は思っている以上に大事。
- つまらないプライドははやめに捨てる!
新卒入社での配属
私が新卒で入社した大手フランチャイズ本部の会社方針は「新卒は全員現場配属」
当時はメンバーシップ型雇用全盛期ですので、こういった方針は一般的でしたね。
私は一応、理系国立大学院修了なので、さすがに店舗への配属はないだろうとたかをくくっていましたが、告げられた配属先はまさかのファストフード店の現場。。
当時は本当にびっくりして、そのままやめて帰ろうと思いました。
両親には、
「そんなことをさせるために大学院まで行かせたんじゃない!」
「辞めて他の会社に行った方がいい!」
と本気で言われましたね。
ただ、「すぐ辞めると、逃げ出したと思われる!」という負けず嫌いな気持ちが勝り、とりあえず店舗配属を受け入れて、全ての仕事を覚えて、結果を出した後、堂々と辞めようと決意しました。
配属先での仕事
1ヶ月の入社研修後、静岡県浜北市(現在は浜松市と合併)の店舗に配属され、いきなり現場に放り込まれました。
私はバイト自体、ほとんどしてこなかったので、副店長という立場ですが、バイトに業務を教わる毎日です。
そんな副店長をバイトがリーダーとして認めるはずもなく、入社1年目の人間関係はボロボロで、ストレスフルな毎日でした。
配属後1年
負けん気の強さだけで、店舗運営を全て覚え、日々の業務で困ることはなくなりました。
ただ人間関係は相変わらず最悪です。
毎日楽しくない。
店に行きたくない。
なんでこんなとこにいるんだろう。
口から出てくるのは愚痴ばかりでした。
このとき、私は気づきました。
仕事が出来るだけでは、人間関係は良くならない。
信頼されるためには、自分を変えないといけない。
今のままでは、別の環境に移っても、また同じことを繰り返す
社会人2年目で自分を変える決心をしました。
信頼を得るための具体的なアクション
とはいえ、何から始めれば良いか全く分からない。
そこで、まずは私が心を開かなければ、相手も私に心は開かないだろうと思い、以下の3つを実践してみることにしました。
1.挨拶をする
手当たり次第、目を見て大きな声で挨拶しました。
一方的に挨拶して終わるのではなく、挨拶をした後に相手の反応まで確認し、相手から返事がない場合は、
売上はどう?お客さんの流れはどう?
といった感じで、しつこく話をするよう心がけました。
私が配属された店舗はショッピングモールのテナントとして入っていたので、他のテナントの方にも挨拶し、積極的なコミュニケーションをはかりました。
2.嫌なことを率先してする
その日の営業が終わると毎日、店舗の清掃をします。
その際、以下のように提案しました。
今日の清掃作業は3つ。
みんなが一番やりたくないのはどれ?
私がそれをするから、残りをみんなでやってください。
バイトが一番嫌がる清掃はほぼ決まっていて、グリストラップ清掃です。
飲食店には店舗の排水を直接下水道に流さないよう、一旦排水を貯めて、グリス(油脂)を分離することが法律で義務付けられており、その装置をグリストラップといいます。
排水を貯める装置なので、当然臭くて汚い。
このグリストラップ清掃を好んでやりたい人はいないので、私が常に引き受けていました。
当時は、副店長という立場上、バイトに迎合してはいけないという勝手な思い込みが、それを捨てました。
この固定観念が私のつまらないプライドだったことには、ほどなく気づきました。
3.責任者として対応する
バイトがお客さま対応で困っていたら、すぐに私が入るようにしました。
バイトに呼ばれてから登場するのではなく、少しでも怪しい雰囲気があれば、すぐに私が声をかけて対応する。
そのため、常に店舗全体を俯瞰して、バイトの動きやお客さまの変化に気を配るようになりました。
アクションの結果
1ヶ月を過ぎたあたりから、変化を感じるようになりました。
バイトが自ら私に話しかけてくれるようになり、時々冗談も言ってくれるようになりました。
午前中のバイトは人生経験豊富な年配の主婦が多かったので、
「副店長も大変だら」と静岡弁で、私の愚痴を聞いてくれるようになりました。
夕方に入ってくれる高校生のバイトは、学校での出来事や流行っていることなどを教えてくれるようになりました。
2ヶ月を過ぎる頃には、お店に行くのが楽しくなりました。
私は以前よりハードワークになっていたので、身体はしんどかったですが、みんなが楽しそうにチームとして働いているのを見ると、疲れは全く感じませんでした。
信頼を確信した時
お店の雰囲気はよくなり、仕事に行くのが楽しくなって来た頃、私は今まで聞いたことがない言葉を聞くようになりました。
例えば、
急にシフトに穴が空いたため、全バイトに順番に電話していた時、
「副店長の頼みならいいよ。すぐ行きます」と快諾してもらえる。
月末の忙しい時は、
「私達がお店のことは全部やっておくので、バックヤードで月次処理してきて大丈夫ですよ」と声をかけてもらえる。
これが信頼ってやつか!!
信頼関係があると仕事がやりやすいだけでなく、楽しくなると学びました。
店舗経験で学んだこと
私が実践経験から信頼を得るために必要だと学んだことは以下の3つです。
つまらないプライドは捨てる。
最も重要です。
独りよがりのプライドは信頼関係構築において、マイナスしかありません。
仕事が楽しくない、上手くいかない人の原因のほとんとが余計なプライドだと思います。
周りの人に奉仕する。
お客さまはもちろん、お客さまに奉仕する人に奉仕する。
バイト、テナントの方、ディベロッパー、全てが奉仕の対象です。
これが「サーバントリーダー」と呼ばれる考え方ということは、店舗を卒業して、数年後に知りました。
立場に応じた責任をとる。
当たり前ですが、意外と忘れがちです。
臆病なリーダーを誰も信頼してくれません。
時にはパフォーマンスも有効です。
店舗を卒業してから、たくさんのことを学び、経験し、スキルを身に着けましたが、私の仕事観の根底にあるのは、店舗運営時代に身をもって学んだことです。
そして現在、コンサルティングという仕事をするうえで、最も役に立っている経験でもあります。
本日の問いかけ
役職がなくても、助けてくれる人はいますか?
企業ではなく、あなた自身を信頼してくれる人はいますか?
信頼を得るために、とことん馬鹿になってみましょう!
世界が変わりますよ。