PCR検査の品質管理

コロナ禍で「PCR検査」が市民権を得たようなので「検査の品質」について共有します。

検査の品質とは?


そもそも「検査の品質」とはなんでしょうか?
私は「期待通りの判定結果が高確率で得られること」だと思います。
※「検査」と「試験」の定義と違い
ISO9000:2006によると
検査(Inspection)「必要に応じて測定、試験又はゲージ合わせを伴う、観察及び判定による適合性評価」
試験(Testing)「手順(活動又はプロセスを実行するために規定された方法)に従って特性(そのものを識別するための性質)を明確にすること」とあります。

簡単に言うと
「検査=ある基準に基づき、合否判定(あるいは陽性陰性判定)まで行う」
「試験=特性を調査するだけ。検査の中に含まれる」です。
従ってPCRはPCR試験ではなく、PCR検査になります。

検査の品質を担保する


検査の品質を担保するために、特に医薬品や化粧品業界では、
GMP(Good Manufacturing Practice_適正製造規範)という手法を用いており、「適正な機器(ハード)と適正な手順・人(ソフト)で製造(検査)すれば、適正な品質の製品(結果)が得られる」という考え方です。
業界ではよく、「ハードとソフトの両輪で管理する」と言われます。

では、ここでいう適正なハードと適正なソフトとはなんでしょうか?

PCR検査を例に簡単に言いますと、以下のようなイメージです。
適正なハード:間違いのない結果を出せることが事前に確認されている。
定期的にメンテナンス(校正)が行われている等
適正なソフト:何回やっても同じ結果が得られる手順が作成されている。   
その手順を実施する人は教育され、要求される水準を満たしている等

上記から分かるように、分析機器だけ増やしても「教育された人」を用意できなければ、検査業務の品質を保証することはできません。

分析機器を増やせば、検査数自体を増やすことはできますが「検査の品質=検査精度」がどんどん低下していく可能性があります。
PCR検査本来の目的である「期待通りの判定結果が高確率で得られること」を考えると、こういった状態は「望ましくない」ではなく「絶対に避けなければならない」のです。

ちなみに「PCR検査をはじめとする各種検査は、全て自動化されていて誰がやっても同じでしょ?」と思われている方が多いかもしれません。

しかし実際は、サンプルの採取方法や保管に関する教育等が必要ですし、また分析機器に入れる前に様々な前処理が必要な場合も多く、だれでもできる業務ではないのが現状です。

PCR検査の現状


まだサンプルが少ないので、正確な計算はできないですが、
一般財団法人 日本防疫協会の記事によると
「あえて、Kucirkaらの結果から感度を示すとすると、感染から8日目(症状発現の3日後)に偽陰性割合が最も低くなり、その値が、20% (95%信頼区間:12% ― 30%)となることから、感度として一番よい値になるのが、感染から8日目(症状発現の3日後)の80%(95%信頼区間:70%-88%)となります」
https://jeaweb.jp/covid/qa/index.htmlhttps://jeaweb.jp/covid/qa/index.html

少し解説を加えると、感染から8日目(症状発現の3日後)に偽陰性割合が最も低くなり、その値が20% (95%信頼区間:12% ― 30%)=100人調べると、95人の偽陰性確率が12-30%で、残りの5人はもっと偽陰性の確率が高いかもっと低い可能性がある。
感染から8日目(症状発現の3日後)の80%(95%信頼区間:70%-88%)=100人調べると、95人の陽性確率が70-88%で、残りの5人はもっと陽性の確率が高いかもっと低い可能性がある。

この検査精度が高いか低いかについては、ここでは議論しませんが、こういった背景を知らない方は「PCR検査で陰性だったから大丈夫!」と思いますよね。
一方、検査する側の立場になると「この状態でお墨付きを与えるのは避けたい」という想いもご理解できると思います。
科学はみなさんが思ってるほど、まだまだ万能ではないんです。

品質管理の課題


品質管理の課題は、業種業界に限らず結局「人」にいきつきます。
この課題をクリアするために、AIやIoTの活用が叫ばれているわけですが、様々な障壁があり、まだまだ時間がかかるのが現状です。

最後に、コロナウイルスによりPCR(Polymerase Chain Reaction_ポリメラーゼ連鎖反応)という言葉が市民権を得たと思いますが、理系でも大学か大学院でないと詳細は習わない分野なので、PCRの仕組みについて知っている方は少ないと思います。

しかし、最近は分かりやすい本が各種出ていますので、少し読んでみると、今までの情報やこれからの情報を新しい視点で見ることができるかもしれません。分子生物学という分野ですので、興味のある方は一度学んでみてはいかがでしょうか?適当なことを言うメディアや自称コメンテーターがいかに多いかが分かると思いますよw

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