皆さんは「生肉」は好きですか?
昔は色んな生肉を気軽に食べられたのに、今はなかなか食べられないと思っている方も多いと思います。
本日は私の専門分野である品質保証の観点から、生肉に関する規制の現状を分かりやすくお伝えします。
生肉は食べられない?
食品に関するルールは「食品衛生法」と呼ばれる法律で決められています。
現在のところ、生肉で食べることが禁止されているのは、
牛レバー
豚肉、及び豚の内臓
これだけです。
牛のユッケ、牛肉のたたき、馬肉の刺し身などは、禁止ではなく、食品衛生法に従っていれば、合法的に提供可能です
鳥わさ、鳥のたたきなどの鶏肉は、規制する法律がないので、お店が独自で提供することができます
生肉を食べる文化
中国地方、九州地方では、昔から生肉は日常的に食べられていました
スーパーでも普通に売っており、広島生まれの私も昔は牛肉のたたき、鳥のたたきをよく食べていました
今年福岡に行った際、スーパーに行きましたが、鳥のたたきは普通に売っていましたね
生肉は地域に根付いている食文化です
生肉規制の経緯
2011年、焼肉チェーン店が提供するユッケを食べて、複数の方が食中毒により亡くなりました
この原因菌が、腸管出血性大腸菌(O157)と言われています
これをきっかけに2012年7月に食品衛生法が改正され、飲食店の生食用牛レバー提供が禁止されました
豚肉、及び豚の内臓の提供は2015年6月に禁止されました
牛レバーが禁止の理由
先ほど書いた通り、食品衛生法で提供が禁止されているのは、牛レバーだけです
理由は、
牛レバーの中に腸管出血性大腸菌(O157)が存在するからです
腸管出血性大腸菌(O157)は、牛などの腸管におり、致死率が1〜5%と非常に危険な食中毒菌です
一方、危険とはいえ、通常は生肉の表面に付着しているので、表面を炙る、茹でる等で殺菌することができます
しかし、牛レバーだけはなぜか牛レバーの内部に腸管出血性大腸菌(O157)がいます
今のところ、理由は分かっていませんが、だから牛レバーを加熱せず食べることは死ぬこともある非常に危険行為なのです
生肉を提供する店が少ない理由
牛レバーの生食が禁止されていることをお伝えしました
一方、牛のユッケ、牛肉のたたき、馬肉の刺し身などは飲食店で引き続き提供することができます
しかし、積極的に生肉を提供するお店は多くはありません
これには2つ理由があります
- 衛生管理が厳しい
- 生肉を提供するためには、たくさんの厳しいルールを守らないといけません。調理器具を生肉専用にする、シンクを生肉とその他で分ける、定期的に殺菌・消毒を行うなどです。作業者の訓練も必要ですし、設備投資もいるかもしれません。加えて、ここまでしても食中毒が発生するリスクは加熱した商品と比較すると、格段に高いので、敢えて取り組む経営者は少ないのです。
- 需要が小さい
- 生肉は熱狂的なファンが多い食材です。一方、全国で一般的な食文化ではないため、衛生管理に手間がかかるわりにあまり売れないのです。
鶏の生食の取り扱い
牛肉、馬肉は提供できるけど、食品衛生法で厳しく規制されているとお伝えしました。
一方、鶏肉の生食については、全くルールがないのが現状です。
これには2つ理由があります
- 鶏肉にいる食中毒菌は主にカンピロバクター
- カンピロバクターに感染すると、症状はつらいですが、致死率は0.1%程度です。日本国内では過去10年で死亡者は0です。腸管出血性大腸菌(O157)と比べると、取り組みの優先順位は下がります。
- 鶏肉の生食は地域限定
- 鳥のたたき、鳥わさは、ユッケと比べると、食べられている地域が中国地方、九州地方の一部と限定されます。これも取り組みの優先順位が下がる理由の1つです。
カンピロバクターについて
カンピロバクターは身近にいる食中毒菌なので、少し掘り下げてみます
市販鶏肉のカンピロバクター汚染率
市販されている鶏肉を調査した結果、少ないもので20%程度、多いものだと60%近くの鶏肉がカンピロバクターに汚染されているようです
殺菌方法
カンピロバクターをはじめとする一般的な食中毒菌は、75℃で10分加熱すれば、死滅します
ここで強調したいことは、中心温度75℃で10分です
表面を炙っても中に食中毒菌がいる場合は、死んでいません
地方自治体の対応
鶏肉の生食は法律で禁止されていませんが、自治体によって注意喚起レベルの違いがあります
東京都渋谷区
生食は止めましょう!というスタンスです
鹿児島県
鶏肉の生食文化があるので、きちんと管理して安全に食べていこうというスタンスです
生肉を食べたい人へ
牛レバー、豚肉、豚の内臓を生で提供することは禁止されていますので、お店で食べることはできません
一方、個人の判断で食べることは禁止されていません
ただ国が禁止するほど、危ないということなので、止めましょう
鳥のたたき、鳥わさは提供しているお店があるので、信頼できるお店で食べましょう
また通販でも手に入ります
生食用に捌いた鶏肉であれば、自宅でも作れますが、なかなか手に入らないので難しいです
スーパーで販売されている鶏肉はカンピロバクターに汚染されている確率が高いので、この鶏肉で鳥のたたき、鳥わさを作るのは止めたほうが賢明です
提言
私は鳥のたたき、鳥わさが好きなので、これからも食べたいです
一方、生食に興味がない方は、食べないことが正解です
現代社会で生肉を食べるメリットはありません
今回は少し難しい内容だったかもしれません
もっと詳しく知りたい方は、いつでもお声がけください